ディザイアンの連中と交戦状態になり、このままでは不味い、と部下達を逃がしたは良いが、相手の数が多かった。

 何とか蹴散らして逃げてきたものの、額からの血が目に入り、目が開かない。毒まで回って、足取りもおぼつかない。とにかく安全そうな森まで逃げて、懐の薬を取り出そうとしたところで、ユアンの視界は閉ざされた。

 ◯

 光が暖炉のように、血の抜けた身体に落ちる。光は温かであったが、目蓋を開けとユアンを起こすようにまばゆい。

 ──もう少し眠っていたいのだがな。

 何か冷たいものまで額に触れて、仕方なくユアンは目を開く。

 木々から落ちる木漏れ日に照らされて見下ろす光が一瞬、懐かしい女性の緑髪を映し出して──鮮やかな赤い服に切り替わる。ロイドだ。特徴的な髪型も目立たない髪色も似ても似つかない。

「あっ、起きた」
「……何だ貴様か」
「森で傷だらけでぶっ倒れてたのを手当てしてやったのに、その言い草はねえんじゃねえか?」

 額には濡れた布が乗せられている。寝ている間に薬も飲まされたのだろう、気分は悪くなかった。膝を枕にしている事に気づいたが、起き上がろうとすると「まだ寝てろ」と押し留められる。どこまでお人好しなのか。開き直って堪能してやる事にした。

「なんでこんなボロ雑巾みたいになってんだ」
「ディザイアンと交戦状態になってな。部下を逃がして一人で引き受けたらこの有様だ、らしくもない」

 目的のためならば同胞さえも冷酷に切り捨てていたのがコレだ。何の気まぐれを起こしたものやら。

「ふうん。ま、良いんじゃねえか? すかした顔で気取ってるよりずっと、組織のリーダーっぽい感じするぜ」

 赤い服の少年はこちらの髪を撫でながら、太陽の光のように温かな言葉を落とした。きっとこの光に正気をなくして、らしくないことをしてしまったのだ。